UAE移住の概要
アラブ首長国連邦(以下、UAE)は中東に位置し、7つの首長国(アブダビ、ドバイ、シャールジャ、アジュマーン、ウンム・アル=カイワイン、フジャイラ、ラアス・アル=ハイマ)からなる連邦制国家です。首都はアブダビ。
英語でUnited Arab Emirates(UAE)と表記するようにUnited(合併した)Arab(アラブの)Emirates(首長国)で、1972年12月2日に7つの首長国が合併し1つの国になりました。
2024年で建国53年目を迎えました。
ドバイとアブダビの関係は、アブダビは政治の中心でドバイは経済の中心という構造になっています。
項目 | アブダビ | ドバイ |
---|---|---|
人口 | 145万人 | 333万人 |
面積 | 67,340㎢ | 3,885㎢ |
GDP | 2,490億ドル | 1,050億ドル |
GDP内にオイルが占める額 | 35.9% | 1% |
GDP成長率(2024年第一四半期) | 4.7%(Non-oil GDP) | 3.2% |
1人あたりの平均所得 | 13万ドル | 4.4万ドル |
年間の観光客数 | 159.3万人 | 487.5万人 |
1番大きな企業 | ADNOC(石油会社) | Emirates Group(航空会社) |
主要産業 | 石油・ガス産業、化学・石化産業、航空宇宙産業 | 観光・ホスピタリティ業、不動産業、金融サービス業 |
ドバイとアブダビの観光や生活面の違いについて、以下の記事で詳しく紹介しております。
なぜUAEへの移住が注目されているのか
日本人がUAEへ移住する人のほとんどが、仕事または節税が目的です。
UAEは地理的にヨーロッパ・アフリカ・アジアが交わる場所に位置するため、さまざまな国へのハブとして機能しています。
UAEからのフライト4時間で世界の3分の1の国へアクセス可能で、そして8時間で世界の3分の2の国へアクセス可能です。ドバイ国際空港(DXB)は、10年連続で世界一旅客数の多い国際ハブ空港となっています。
そのため、日系企業で中東・ヨーロッパー・アフリカ・アジア様々な国でビジネスの拡大を狙う企業の拠点となっています。2022年ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、ロシアまたはウクライナに拠点のあった日本企業のいくつかがUAEに移動してきました。
また、UAEへ移住することで個人・法人共に税金面での恩恵を得られます。税制の優遇に関しては以下で詳しく紹介します。
アブダビとドバイの比較
アブダビとドバイは多くの面で違います。人によって好みは異なると思いますが、それぞれの特徴を理解した上で居住先を選ぶのが良いでしょう。
アブダビ移住の魅力と特徴
アブダビは豊富な石油資源を背景に、経済が非常に安定しています。現在は石油資源を再投資し様々な面での発展を見ることができます。
- 首都であり政治・文化の中心
アブダビはUAEの首都で、政治的・文化的な中心地です。連邦政府の主要な機関が集まっており、国家の象徴的なイベントが多く行われています。 - 落ち着いた生活環境
アブダビはドバイに比べて人口密度が低く、都市全体が静かで落ち着いた雰囲気です。自然も多く、ゆったりとしたライフスタイルを求める人に向いています。また物件に関してもヤス等やサディヤット島は低層階が多いです。 - 長期間で定住したい環境
教育・医療・文化、それぞれで面で世界クラスレベルだと言えます。教育はニューヨーク大学アブダビ校、医療はクリーブランドクリニック、文化はルーブル美術館やチームラボ(2024年完成予定)など世界トップレベルの機関が集結しています。
ドバイ移住の魅力と特徴
ドバイは世界的に活気のある都市で、観光客やビジネスマンが多く集まります。フリーゾーンエリアの開発などで様々な国の企業がドバイへ進出しています。
- 観光・ビジネスの中心
ドバイは観光業や商業が非常に発展しており、国際的なビジネスハブとして知られています。観光スポットやビジネス施設が多く、世界中から多くの人々が集まります。 - 先進的で活気のある都市
ドバイはUAEの中でも最も進んだ都市の一つで、斬新な建築やインフラの発展が目立ちます。新しい技術やアイデアを取り入れる姿勢が強く、常に変化と進化を遂げています。 - 多文化な国際都市
ドバイは世界中からの移住者が多く、非常に国際色豊かな都市です。多様な文化が混ざり合っており、さまざまな国籍やバックグラウンドを持つ人々が共存しています。
アブダビとドバイの生活環境の違い
長期的に住むのであればアブダビがおすすめで、数年間の滞在であればドバイが良いかと思います。
理由としては教育・医療・文化的にアブダビの方が進んでいるため、より質の高い生活を送れます。アブダビの方が人口も外国人の割合も少ないため、現地の富裕層が多く生活にゆとりを感じられます。そのため、ドバイの富裕層がアブダビへ移住してることも事実です。
しかし、単身で数年程度住むのであれば、様々面で機会の多いドバイが良いでしょう。法人設立や免許取得などは、ドバイの方が発行数が圧倒的に多いのでアブダビと比べてスムーズな手続きができます。
UAE移住のメリット
UAEは日本と比べ税制面でのメリットや、日本と同水準の治安の良さです。これにより安全な生活を送ることができます。
これにより世界中の超富裕層や投資家がこぞってUAEへ押し寄せています。
税制の優遇措置
日本 | 香港 | シンガポール | ||
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個人所得税 (住民税込) | 最大55% | 0% | 17% | 20% |
法人税 (地方法人税込) | 約35% | 9% | 16.5% | 17% |
譲渡所得税 配当所得税 | 20.315% | 0% | 0% | 0% |
相続税・贈与税 | 10~55% | 0% | 0% | 0% |
消費税 | 10% | 5% | 0% | 0% |
固定資産税 | 1.4% | 0% (2%: アブダビ・4%: ドバイ) | 0% | 7% |
UAEへ移住することで個人・法人共に税金面での恩恵を得られます。個人の場合は個人所得税や相続税などがかからず、法人の場合は低い法人税率が魅力です。
実際にあった過去の事例を紹介しますと、80歳ほどの方がUAEにて不動産を購入しゴールデンビザを取得しました。これにより、娘さんなどご家族もビザを取得し、銀行口座を開設することができました。
不謹慎な話かもしれませんが、相続税や贈与税がかからなUAEでは本人が仮に亡くなっても、ご家族にギフトという名目で資産が譲渡され税金はかかりません。加えて、アブダビ・ドバイの不動産物件は年々値上がりしているため、資産運用をしながらご家族に引き継げるというメリットがあります。
治安の良さと高い生活水準
アブダビは2024年に世界一番安全で治安の良い都市に選ばれました。現在UAEに居住する89%が外国人で、11%が現地人です。このように多くの外国人居住者がいるにもかかわらず、世界一番安全で治安の良い都市に選ばれることは素晴らしい功績だと言えるでしょう。
生活水準に関してお話しすると日本以上に明確な所得格差があります。一部の専門職や管理職は高い給与を得られるため、生活水準が向上しますが、UAEに住む多くの外国人は途上からの出稼ぎ労働者で低収入で仕事をしています。
専門職や管理職は月にAED20,000(80万円)ほどもらうことができますが、出稼ぎ労働者はAED1,000~2,000(4万円から8万円)で働いている人もいます。この給料に関しては国籍も関係してきます。
多文化共生と国際的なコミュニティ
UAEで生活を送る上で多くの国籍の人と関わるようになります。オフィスで働く人はヨーロッパ系が多く、レストランや店舗に立っている人の多くがフィリピン人、タクシーはインドやパキスタンなど様々です。UAEで生活をする上で、UAEの文化以外にも様々な文化の違いに戸惑うことがあります。
個人的に以下のような驚きな体験をしました。
- 明確な所得格差が存在する。40度以上の炎天下の中を月収8万円程度で働く肉体労働者を横目に、5,000万円以上の高級車が通り過ぎていくのが日常です。出稼ぎ労働者と投資家は立場は違いますが、明確な所得格差には常に驚きます。
- 賄賂がまかり通る社会。仕事をする上で賄賂を渡すと仕事がスムーズに進みます。例えば、銀行口座開設や法人設立などの際に、担当者に賄賂を渡すと仕事を優先的に進めてくれます。場合によっては、一般的にはできないことを根回ししてくれたりもします。
- UAEは親日な国です。日本人だと言うと、UAEの現地人をはじめ多くの外国人が親切にしてくれます。これまでの日本人が築いた日本人の功績と信頼だと感じます。
UAE移住のデメリット
UAEに移住する際に、日本よりも物件賃料が高いことや灼熱の夏などデメリットがあるのも事実です。実際に私も賃料が毎年上がることに頭を抱えています。
高い家賃と生活費
家賃に関して私の個人的な体験を共有させていただくと、2022年に契約した家賃は2024年の2回目の更新時に1.56倍に増えました。
これはダウンタウンや一等地だから値段がここまで上がるのではなく、ダウンタウから車で30分ほどの郊外のエリア(JVT)で、このような値上がりになりました。
スタジオタイプ(1K):34平米
エリア:JVT
1年目の家賃(2022年):AED32,000(124万円)、10.3万円/月
2年目の家賃(2023年):AED38,000(149万円)、12.4万円/月
3年目の家賃(2024年):AED50,000(196万円)、16.3万円/月
このことから、最初に入居した際には許容範囲な賃料だったとしても、年々値段が上がる傾向にあります。
生活費に関しては以下のようにまとめられます。結論、贅沢品は日本よりも高いですが、それ以外は日本と同程度かそれよりも安く感じられます。
- 日本よりも高い:外食費、娯楽費
- 日本と同じ:スーパーの食材、水道光熱費、通信費
- 日本よりも安い:交通費(公共交通機関やタクシーの値段)
UAEでは夏がオフシーズンとなるため、ホテルの値段や飛行機の値段は安くなる傾向にあります。そのため、リッツ・カールトンなどの5つ星ホテルでも半額または3分の1の値段で宿泊することができます。
気候の厳しさと暑さ対策
UAEの日照時間は年間で1日あたり平均9時間以上で、 3・4・10・11月がベストシーズンです。
5・6・7・8月は気温がかなり高くなるため、基本的には外でのアクティビティなどは控えられます。
ドバイにあるテーマパーク「グローバルビレッジ」の営業期間も暑い時期を避けた10月から5月のみオープンします。ちなみに2024年は10月16日から営業開始し、2025年5月11日に営業終了します。
ローカル文化と法律への適応
UAEの法律はイスラム法(シャリーア)に基づいており、他国と比べて厳しい規制がいくつかあります。たとえば、公の場での喫煙や飲酒、酔っ払った状態での行動は法律で禁止されています。また、公共の場でのカップルの親密な行為も厳しく制限されており、手をつなぐ程度は許されますが、それ以上の行為は慎まなくてはいけません。
さらに、ソーシャルメディアやインターネット上での発言にも注意が必要です。UAEでは中傷や侮辱的な発言、さらには無許可で他人の写真を撮ることが法律で禁じられています。特に政府や宗教、文化に対する批判は法的処罰の対象となる可能性があります。
永住権取得の難しさ
UAEで永住権を取得するのはかなり難しいです。そのため、ほとんどの外国人は従業員ビザや投資家ビザ(ゴールデンビザ)などを取得し、定期的にビザの更新を行います。
ちなみに以下の資格条件を満たせば、UAEで永住権を取得することができます。
- 申請者がUAEの教育機関で学業を修了している。
- UAE市民の子供、配偶者、親、メイド、または近親者である。
- UAE国内で多額の投資を行っている。
UAEでの生活に必要な準備
UAEへ観光でくる場合は、最大60日間滞在可能です。しかし長期での滞在にはビザの取得と住居探しをしなくてはいけません。
ビザと居住許可の取得方法
UAEで合法的に生活するためには、適切なビザや居住許可を取得する必要があります。一般的なビザの種類は以下の通りです。
- 就労ビザ:UAEで働くために必要なビザです。雇用先がビザのスポンサーとなり、会社がビザの手続き行います。取得までのプロセスは雇用契約を結んだ後で、就労する企業がが申請を代行します。
- 家族ビザ:家族をUAEに呼び寄せる場合に発行されます。家族ビザを取得するには、スポンサー(主に家族の働き手)が一定の収入を証明する必要があります。
- 投資家ビザ(ゴールデンビザ):優れた才能や高い投資額を持つ外国人は、10年など長期滞在が可能なゴールデンビザが提供されます。
ビザ申請は通常、オンラインで行うことができ、必要書類には雇用契約書、パスポート、写真、健康診断の結果などが含まれます。ビザが承認された後、居住許可証が発行され、これは滞在期間中の公式な身分証明書となります。
住居の探し方と費用
UAEで住居を見つける際には、地域や予算に応じた選択が必要です。アブダビやドバイなど主要都市では、アパートやヴィラが主な選択肢となります。
- アパート:多くの外国人が選ぶのがアパートです。市内中心部の物件はやや高額ですが、郊外に行けば比較的手頃な価格の物件が見つかります。
- ヴィラ:ファミリー層に人気があるヴィラは、より広いスペースとプライバシーを確保できる選択肢です。郊外に位置することが多く、賃貸費用は高めです。
アブダビ・ドバイでの不動産物件探しに関しては、お客様のご要望にあった物件をご一緒にお探しさせて頂きます。
ヘルスケアや保険制度について
UAEでは、高水準の医療サービスが提供されています。アブダビやドバイでは外国人も利用することが多いため、最先端の設備と英語を話す医師が多いのが特徴です。
医療保険は雇用主が提供することが義務付けられており、保険に加入していれば基本的な医療サービスを受けることができます。しかし、追加のカバーが必要な場合には、個人で保険プランを拡充することも可能です。保険なしで医療を受けると高額になるため、自分に合った保険プランにすることが重要です。
UAE移住のための注意点
UAEへの移住のために、日本とは違う宗教と文化の理解、そして住み心地が良いと思えるコミュニティーが不可欠です。
宗教や文化の違いを理解する
イスラム教はUAEの生活の中心であり、モスクでの礼拝やラマダン期間中の断食などが重要な行事です。
在住者はこの宗教的な慣習に敬意を払い、モスクに入る際には服装や振る舞いに気を配る必要があります。モスクを訪れる際には、肌を覆う服装をし、礼拝が行われている最中には静かに過ごしましょう。
宗教理解に関しては仕事をする上でも意識する必要があります。ラマダン期間中はイスラム教の人は断食をするので、その期間中に飲食をする際には隠れて食べることや、周りがの人の気が立ってしまうこともあるので理解してあげましょう。
コミュニティとの関係づくり
外務省によるとUAEには4,546人(2023年10月)に日本人が住んでおり、ドバイにはそのうちの3,557人(2023年10月)が居住しております。それ以外の日本人は主にアブダビに居住しています。
UAEでの長期滞在者のほとんどが企業の駐在員や航空会社に勤務する人たちで、完全に長期移住しようとしてる人はあまり多くいないようにも感じます。アブダビやドバイには日本人学校がありますが、積極的にコミュニティーに属さない限り日本人との繋がりを気づくのは難しいです。
まとめ:アブダビ・ドバイ移住の決断に向けて
UAEで快適に生活やビジネスを行うためには、ローカルの文化や法律への理解と適応が不可欠です。
礼儀正しい態度を持ち、宗教的および文化的な習慣を尊重し、法規制を守ることで、現地での生活やビジネスは円滑に進むでしょう。
文化的な違いに意識し周囲との調和を大切にすることで、UAEでの経験がより豊かで意味のあるものとなるはずです。