アラブ首長国連邦(UAE)へ来るほとんどの人が訪れる場所が、ドバイとアブダビです。両都市は隣接しており、都市間を1時間ほどで移動できます。
しかし、ドバイとアブダビの違いを明確に知っている人は少ないのではないでしょうか?
本記事ではドバイとアブダビの違いは何かについて、観光と生活の側面に着目し解説します。
アブダビとドバイの概要
ドバイとアブダビはどこの国にあるのかというと質問がよくありますが、それぞれの都市はアラブ首長国連邦(UAE)にあります。
地図でアブダビ(Abuy Dhabi)とドバイ(Dubai)を確認すると、隣接していることがわかります。
ドバイとアブダビ間のアクセス方法は車の運転、タクシー、バスで、片道1時間の距離となります。
詳しいアクセス方法に関しては、別記事にて紹介しているのでそちらからご確認ください。
項目 | アブダビ | ドバイ |
---|---|---|
人口 | 378万人 | 375万人 |
日本人の数 | 500人程度(想定) | 3,557人 |
面積 | 67,340㎢ | 3,885㎢ |
GDP | 2,490億ドル | 1,050億ドル |
1人あたりの平均所得 | 13万ドル | 4.4万ドル |
GDP内にオイルが占める額 | 35.9% | 1% |
年間の観光客数 | 159.3万人 | 487.5万人 |
1番大きな企業 | ADNOC(石油会社) | Emirates Group(航空会社) |
主要産業 | 石油・ガス産業、化学・石化産業、航空宇宙産業 | 観光・ホスピタリティ業、不動産業、金融サービス業 |
ドバイとアブダビの関係は、アブダビは政治の中心でドバイは経済の中心という構造になっています。
GDPを単純に比較するとアブダビの方が石油や天然ガスの豊富な採掘での収入により、ドバイの2倍以上となっております。しかし、それでは石油に依存したGDPになってしまうため、アブダビでは石油や天然ガスからの収入を除いたNon-oil GDP(非石油収入)でどのくらいのGDP成長率かを測ります。
ちなみに、2024年第一四半期のアブダビのNon-oil GDP(非石油収入)成長率は4.7%で、ドバイのGDP成長率は3.2%という数字がでており、アブダビの方がドバイよりも高い成長率をみせました。
2009年にドバイでは、ドバイ・ショックと呼ばれる信用不安から株式相場が急落しドバイは大規模な債務の返済が迫りました。その際、ドバイはアブダビ国立銀行などから100億ドル調達し難を逃れました。
アブダビ政府がこの経済危機の際に援助をしたことから、ドバイにあるブルジュ・ハリファという世界一高い建物の名前は、アブダビの首長ハリーファさんから由来しました(元々はブルジュ・ドバイという名前の予定でした)。
ドバイが経済危機に直面した際は同じUAEの首都アブダビに支援してもらう構造になっています。このことから経済的にオイルマネーが下支えしているアブダビはより安定的だと捉えることができます。
参照:BYROHIT. “Abu Dhabi Vs Dubai – Politics, Area, Population & Economy” UAE For Tourists, https://uaefortourists.com/is-abu-dhabi-bigger-than-dubai/. Accessed 9 June 2023.
アブダビとドバイの人気の観光地
アブダビとドバイは両方とも観光地として人気があります。そして、それぞれ独自の魅力をもっています。
アブダビは、落ち着いた雰囲気でモスクや博物館など文化施設が充実しています。特に有名な観光地はシェイクザーイード・グランドモスクはアラブ文化を強く感じることができます。
ドバイは、摩天楼が立ち並び、煌びやかでモダンな雰囲気を体験できます。ブルジュ・ハリファなど世界一の高層ビルやパームジュメイラなどの人工島が有名で街の活気を強く感じられます。
アブダビの観光地
- シェイク・ザーイド・グランド・モスク
- プレジデンシャルパレス(QASR AL WATAN)
- ルーヴル・アブダビ
- エミレーツ パレス アブダビ(マンダリンオリエンタル)
- サーディヤット島
- フェラーリワールド
- アブラハムファミリー ハウス
- ヤスモール
- ガレリアモール
- ヤス・ウォーターワールド
ドバイの観光地
- ドバイモール
- ブルジュハリファ
- デザートサファリ
- ドバイスーク(ゴールドスーク、スパイススークなど)
- パームジュメイラ
- ドバイマリーナ
- 未来博物館
- カイトビーチ
- モール・オブ・ジ・エミレーツ
- イブン・バットゥータ・モール
アブダビとドバイ生活と文化の違い
アブダビとドバイの生活と文化の違いには、アラブ文化や宗教意識の差が取り上げられます。
アブダビでは現地の人(エミラティ)が多くいることから、よりアラブ文化が強いとされています。ドバイでは世界中の人が多く来るため、宗教意識に対して寛容であることや女性の肌の露出も問題になりません。
最近ではアブダビでもUAEで初のお酒の蒸留所(SIDE HUSTLE)がオープンしビールやウイスキー作りが開始されたり、ビーチハウスでお酒と音楽を楽しめるようにもなりました。UAEは建国してまだ50年程度で法律や習慣が常に変化しています。
アブダビでの生活
- 家族向け環境
アブダビは静かで安全な都市環境を提供しています。ファミリー向けの住宅地やレジャー施設が多く、家族でのんびり過ごすのに適しています。そのため、子育てのためにドバイから移住してきた富裕層も多くいます。最近では教育レベルがドバイよりもアブダビの方が高いことから、子供の将来を考えて富裕層が移り住んできています。 - 文化・イベント
サディヤット島ではルーブル・アブダビや、これから公開されるチームラボ、グッゲンハイム美術館など文化的な側面に加え、マングローブ国立公園など自然保護的な施設が多くあります。
ヤス等では大きなイベントが毎年開催されます。アブダビF1グランプリ、エミネムのコンサート、NBAの試合などが行われました。 - レストランとカフェ
高級レストランやカフェが多く、特に海辺のエリアでは素晴らしい景色を楽しみながら食事を楽しむことができます。 - 生活費
ドバイと比べて若干安いですが、日本と比較すると住宅費や娯楽費は依然として高い水準にあります。 - 自然環境
アブダビには天然のビーチが多く、リラックスできる環境が整っています。特にコルニッシュビーチやサディヤットビーチは美しい景観と清潔さで知られています。ドバイのJBRやカイトビーチと比較し、人が少ないのも特徴です。 - レクリエーション施設
公園や保護区が多く、プレジデンシャルパレス(QASR AL WATAN)、マングローブ国立公園、ヤス島のフェラーリ・ワールドやウォーターワールドなど、家族向けのレジャースポットが豊富です。今後はワーナー・ブラザースワールドにハリーポッターワールドもできるなど、多くのファンから注目が集まっています。 - アウトドア活動
自然保護区やマリーナ、砂漠ツアーなど、アウトドア活動のオプションが多く、自然と触れ合う機会が豊富です。
ドバイでの生活
- 多文化性
ドバイは世界中からの移住者が多く、多文化が混在する都市です。さまざまな国のレストラン、フェスティバル、文化イベントが開催されており、多様性に富んだ生活が楽しめます。 - エンターテイメント
ナイトクラブ、ビーチクラブ、コンサートホールなどの娯楽施設が豊富です。特にパームジュメイラやジュメイラビーチレジデンス(JBR)などの地域は、活気に満ちたナイトライフの中心地となっています。 - ショッピング
ドバイモールやモール・オブ・ジ・エミレーツなどの巨大ショッピングモールがあり、高級ブランドから日用品まで何でも揃います。 - 生活費
住宅費、特に家賃が高い傾向があります。高級マンションやヴィラが多く、生活水準に応じて選択肢が広がります。家賃に関しては毎年5%ほど上昇します。 - 人工施設
ドバイは人工的なビーチやテーマパークが多く、アウトドアアクティビティを楽しむ場所が豊富です。スキー・ドバイ(屋内スキー場)、アクアベンチャー・ウォーターパークなど、エンターテインメント施設が充実しています。 - 公園と緑地
サフィアパークやクリークパークなどの都市公園がありますが、総じて緑地は限られています。
アブダビとドバイ交通とインフラの違い
アブダビの交通事情
- 公共交通機関の少なさ
アブダビはドバイに比べて公共交通機関が少なく、主にバスが中心です。メトロはありませんが、バス路線は整備されています。 - 自家用車の利用
多くの住民が自家用車を利用しており、駐車場も多く整備されています。車での移動はスムーズで、渋滞もドバイほど頻繁ではありません。 - 空港アクセス
2023年11月にオープンしたアブダビ国際空港(ザイード国際空港)は市内から近く、タクシーや専用バスで簡単にアクセスできます。また、エティハド航空のハブ空港であり、国際便も多く利用されます。開業60日間で2万4000便以上(旅客数は448万人)を受け入れ、今後とも路線の拡大予定です。
ドバイの交通事情
- 公共交通機関
ドバイメトロは主要な観光地やビジネスエリアを網羅しており、利用者にとって非常に便利です。トラムやバスも頻繁に運行しており、移動手段に困ることはありません。日本の三菱もメトロの開発に携わっています。 - タクシーとライドシェア
CareemやUberなどのライドシェアサービスが利用しやすく、価格も比較的リーズナブルです。UAEのタクシーの値段は1キロあたり1.97AED(80円)で、日本の1キロあたり410円という値段と比較するとかなり安いです。
目的地から少し距離があるなと感じたら、すぐにタクシーを呼ぶことをオススメします。特に夏の炎天下の中で長時間過ごすのは健康に良くありません。 - 交通インフラ
ドバイの道路は非常に整備されており、シェイク・ザイード・ロードをはじめとするハイウェイが都市内外を結んでいます。しかし、ラッシュアワーには渋滞が発生することが多いです。平日の7:00-10:00と17:00-20:00の時間は、タクシーをなかなか捕まえることができません。
アブダビとドバイ教育と医療の違い
アブダビでの教育と医療の違い
- 医療施設
クリーブランドクリニック・アブダビやシェイク・シャクブート医療都市など、世界最先端の医療施設があります。政府の強力な支援により、医療サービスは安定しており、最新の医療技術が整っています。 - 教育機関
アブダビには多くの国際学校があり、特にサディヤット島やヤス島周辺には高評価の学校が集中しています。ニューヨーク大学アブダビ校(NYUAD)などの世界的に有名な大学もあります。
アブダビの教育と学校情報:https://note.com/shinji_ueno82/n/n7badd9316293
アブダビの大学教育の全貌:https://note.com/shinji_ueno82/n/nd6e9d879ccf6
ドバイでの教育と医療の違い
- 教育機関
ドバイには国際的なカリキュラムを提供する多くの学校があります。イギリス式、アメリカ式、インターナショナルバカロレア(IB)など、さまざまな教育システムを選択できます。また、大学も多数あり、ドバイ国際学術都市(DIAC)には多くの有名大学のキャンパスが集まっています。 - 医療施設
ドバイには高品質の医療施設が多数あり、アメリカンホスピタル、ドバイヘルスケアシティなどが有名です。専門医療や先進的な医療技術も利用可能で、緊急医療サービスも充実しています。
おわりに
アブダビとドバイはUAEを代表する2つの主要都市ですが、観光、生活、交通、教育、医療などの面で大きな違いがあります。
アブダビは落ち着いた雰囲気で文化的側面が強く、家族向けの環境が整っています。一方、ドバイはエネルギッシュでモダンな街並みが印象的で、ナイトライフやショッピングなどのエンターテインメント施設が充実しています。
UAEを訪れる際は、自分の目的や好みに合わせてアブダビとドバイのどちらを中心に計画するかを決めるといいでしょう。両都市の魅力をうまく組み合わせることで、バラエティに富んだ旅行を楽しめるはずです。
UAEは今後も発展を続けていき、状況が変わることも予想されます。最新の情報を随時チェックしながら、アブダビとドバイの違いを楽しむことをおすすめします。