はじめに

近年、タックスフリー(所得税・住民税なし)の魅力で「ドバイは稼げる街」というイメージが拡大しています。実際に「UAE人は平均年収2,000万円以上」といったデータを聞くと、誰もが驚くでしょう。しかし、その背景には「非UAE人や労働者層との収入格差」「タックスフリーでも実質負担がある生活費」など、意外と知られていない実態が隠れています。

本記事では、最新の公式データや信頼できる外部ソースをもとに、ドバイの平均年収・生活コスト・税制・ビザ手続きなどを包括的に解説。最後まで読めば、「ドバイは本当に高収入なのか?」という疑問を自分なりに判断できるようになるはずです。

ドバイの平均年収・収入構造を把握しよう

ドバイ全体の平均年収は1,000万超え?

ドバイ全体の平均年収は1,000万超え?

各種統計によると、ドバイにおける平均年収はおよそ1,000万円(約75,000AED/月)を超えるとも言われます。ただし、この数字は「UAE国籍を持つ人々(UAE人)」の高い給与水準と、富裕層ビジネスマンの収入が全体の平均値を押し上げている部分が大きいです。

UAE人・非UAE人・労働者層の平均年収比較
UAE現地人
2000万円
非UAE人
750万円
労働者層
82万円
  • UAE現地人:平均約2,000万円超(世帯年収は約2,600万円)
  • 非UAE人:平均約750万円(世帯年収は約1,012万円)
  • 労働者層:平均約82万円

このように“平均”だけ見ると非常に高額ですが、以下のように層ごとの差が大きいことがわかります。

ドバイでの収入格差
  • UAE人: ドバイの公務員や政府系企業に勤める人が多く、圧倒的に高収入。
  • 非UAE人(外国人専門職層): ホワイトカラーや専門技術職、現地大手企業勤務などで中~高収入を得る。
  • 出稼ぎ労働者層: 肉体労働やサービス業で働く人も多く、月収数万円~十数万円程度。

なぜドバイの人はそんなに高収入なのか?

「オイルマネーで潤っている」というイメージがありますが、実はドバイのGDPに占める石油産業の割合は2%以下。代わりに、国や首長が石油収入を元手に投資やインフラを整備し、企業誘致や金融、観光業を育成した結果、「経済都市」としての地位を確立しています。

さらにUAE人は公務員や石油以外の政府系企業に就職するケースが多く、給与が高い上に税金なし、医療保険や教育面での補助も充実しているため、非常に裕福な層が形成されやすいのです。

タックスフリーだけじゃない?収入を左右するドバイの要素

所得税・住民税がゼロのメリット

ドバイの最大の魅力は、個人の所得税や住民税がかからないこと。日本で年収500万円の人が所得税と住民税で年間55~60万円程度支払うケースと比べると、同じ年収でも手取りが大きく違うのは大きなメリットです。

このタックスフリー制度が世界中の投資家や富裕層を引きつけ、多国籍企業の誘致にも成功してきました。2023年6月には法人税9%が導入されましたが、現状は「一定条件のフリーゾーン企業」であればほぼ非課税に近い状態が続き、個人所得税も実施されていません。

社会保障・医療保険・ビザ費用の実情

「税金ゼロ=負担ゼロ」ではありません。社会保障費が完備されていない分、企業の任意加入保険や個人の民間保険に加入する必要があり、その保険料は高額になる場合があります。また、ビザ関連の行政手続きや医療費自費負担など、日本の感覚とは異なるコストが発生することも留意が必要です。

ドバイは家賃や生活費が高い

給与は高いが家賃や生活費も高い――これは多くのメディアや現地在住者が言及することです。

  • 家賃: ドバイ中心部で1LDKが月15万円~20万円以上。
  • 学費: インターナショナルスクールで年間100~300万円。
  • 外食: レストランによっては日本の1.5~2倍の価格になる場合も。
日本とドバイの主要生活費比較
1LDK(東京)
15万円
1LDK(ドバイ)
27万円
学費(東京・公立)
40万円
学費(ドバイ)
200万円
  • 月間家賃(1LDK、中心部): 東京約15万円、ドバイ約27万円
  • 学費年額: 東京約40万円、ドバイ約200万円
  • レストラン一食の平均単価: 東京約1,200円、ドバイ約2,000円

こうした「稼ぎは多いが支出も多い」状況を踏まえると、実質的に手元に残るお金がどのくらいかを計算することが大切です。

日本との収入・物価の比較:数字で見る差とは

日本の平均年収と大きく違う点

厚生労働省の「国民生活基礎調査(2020)」によると、日本の平均世帯年収は約564万円、1世帯当たりの平均所得は600万円弱が相場です。
一方でドバイでは、

  • UAE人世帯年収: 約2,600万円
  • 非UAE人世帯年収: 約1,000万円超
  • 出稼ぎ労働者世帯年収: 100万円未満
    こうして見ると世帯年収が高い層が目立ち、全体の平均値が大きく押し上げられているのが特徴です。

生活のクオリティを数値化すると

「月収が高い=日本より豊か」とは一概に言えません。住居費や光熱費、通勤費、教育費など、日本より高い部分も多く、給与の中からそれらを支払うと可処分所得は思ったほど伸びない場合もあります。
それでも、所得税や住民税がかからない分、可処分所得は増えるため、高年収層ほどドバイ移住のメリットが大きくなる傾向があります。

私自身、ドバイで生活をしており、生活・教育・娯楽の面では日本の方が高水準にあると感じます。しかし、ビジネスやお金を稼ぐという観点からみるとドバイの方が圧倒的に良いでしょう。

主要業界別:ドバイで高収入が狙える職種

ドバイは金融、IT、建設、観光・ホスピタリティ、不動産、物流など、幅広い業界が成長を続けています。以下は特に高収入が見込める職種の一例です。

  1. 金融: 投資銀行アナリスト、資産運用関連職
  2. IT・テック: ソフトウェアエンジニア、AIエンジニア、プロジェクトマネージャー
  3. 建設・インフラ: プロジェクトマネジメント、エンジニアリングディレクター
  4. 観光・ホスピタリティ: 国際ホテルチェーンの支配人、イベントディレクター
  5. 不動産: ディベロッパーや投資家向けのコンサル、物件管理
業界別の平均月収(百万円)
観光業
32万円
建設業
40万円
不動産企業
48万円
IT関連
60万円
金融関連
100万円
  • 観光:32万円~100万円
  • 建設:40万円~120万円
  • 不動産:48万円~120万円
  • IT:60万円~140万円
  • 金融:100万円~160万円

ドバイ移住に向けたビザ・手続き・注意点

ビザの種類と取得プロセス

  • 就労ビザ(Employment Visa): UAE企業での雇用契約がある場合に取得可能。
  • 投資家ビザ(Investor Visa): 法人設立(フリーゾーンなど)や不動産投資を行う場合に取得可能。
  • ゴールデンビザ(長期居住): 高度人材や投資家に対して5〜10年間のビザを付与。

いずれの場合も、現地スポンサー(就労ビザの場合)が必要だったり、最終的に健康診断や書類認証などの手続きがある点は留意しましょう。

英語力とアラビア語の壁

日常生活やビジネスシーンでは英語が一般的ですが、法律や行政手続きや一部のローカルコミュニティではアラビア語が主流になります。とはいえ、多国籍都市ゆえに英語だけでも生活できるケースが多いです。

注意すべき文化・慣習

イスラム圏特有の文化や法律があり、公共の場での言動や服装、ラマダン期間の飲食などに一定の規制があります。違反すると罰金や拘留など厳しい処罰が課されることもあるため、事前にルールを把握しておくことが重要です。

ドバイ移住のメリット・デメリット総まとめ

ドバイ移住のメリット・デメリット総まとめ
ドバイ移住のメリット・デメリット総まとめ
デメリット
  1. 家賃・教育費など生活コストが日本以上に高い
  2. 社会保障や公的保険が脆弱で、自己負担が大きい
  3. 気候が非常に暑く、砂嵐など自然環境の違いあり
  4. 文化・宗教面でのギャップに注意が必要
メリット
  1. タックスフリーによる高い可処分所得
  2. グローバルなビジネス環境でのキャリアアップ
  3. 近年はIT産業やスタートアップ支援が活発化
  4. 多国籍なコミュニティで国際的な視野を養える

おわりに:ドバイの「高収入」は事実か、それとも幻か

ドバイは確かに高い給与水準や「税金ゼロ」という魅力を持ち、多くの外国人専門職や投資家が集う国際都市です。しかし、その背景には「所得格差の大きさ」や「生活コストの高さ」といった現実も存在します。日本と比較して、支出面で驚くような差が出る場合もあるため、実際に手元に残るお金や生活の快適さを総合的に判断することが重要です。

もしドバイでの仕事や移住を考えているならば、ビザの条件や必要な手続き、生活費試算を綿密に行った上で検討をおすすめします。
ドバイは急速に経済成長を遂げている都市でもあるため、今後の展開次第ではさらなるチャンスが生まれる可能性があります。ご自身のキャリアプランや家族のライフスタイルに合った形で、ドバイを選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。